沙織は、再びアイスティーを口にし、僕に聞いた。
「ねぇ、あなたは死というものに対して、どんなイメージを持っているの?」
僕はタバコを吸い、吐き出す煙の行方を見つめながら、その問いに対する答えをまとめた。
「どんな人にも訪れる人生の終焉かな。」
「そうね、点数を付けるなら30点。」
「なかなか厳しい点数だね。」
「そうかしら?一応、及第点よ。」
そう言って、沙織は窓の外を通る路線バスを見送った。
降り立った中学生らしき集団が、揃いのジャージで談笑している。
指定のジャージで出歩く恥ずかしさを、彼らも数年後に気づくはずだろう。
「あのね、私が聞きたいのは事象としてのイメージじゃないの。」
「と、言うと?」
「私が聞いてるのは、事象に対するイメージなのよ。」
「例えば?」
「辛い、悲しい、恐怖みたいな事象に対するイメージなの。」
「なるほど、それなら不安って答えになるかな。」
「合格。80点あげる。」
「それはどうも。」
沙織は満足そうな顔で半分になったアイスティーを飲んだ。
メトロノーム・シンドローム~第三話~
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