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2025/05/10 17:45 |
初夏の風音~第四話~
僕は喜びと驚きに心を震わせ、携帯を開いた。
それは特別な内容ではなく、単なる現状報告のようなものであった。
『社会人になった』という環境の変化に、ストレスを感じているという事が分かった。

そこから、メールではあったが、連絡を取るようになった。
と言っても、一回もメールをしない日もあれば、一日に十数通のメールを送りあうことも合った。
朝のメール、昼休みのメール、帰宅後のメール。
いつしか、その何の変哲も無いやり取りが楽しみになっていた。

彼女は千葉にある実家から有楽町まで通っているという。
ドアtoドアで二時間もかかるというのだ。
そのせいか、通勤電車は専ら『仮眠』を取る時間であるそうだ。
残業のある日は、終電を人一番気にしなければいけなく、終電を逃した日は秋葉原の漫画喫茶に寝泊りすると言う。

そこで、僕は冗談半分に「終電逃したら、ウチに泊まりに来れば?(笑)」とメールしたこともある。
高校時代の友人が「(笑)をつければ、大概の事は許される!」と断言していたことを思い出したからだ。
その時、彼女は「うん、やばかったら連絡するね!」と言った。

そこに下心が無いといえば嘘になる。これでも僕は男だ。
ただ、その比重が他の女性に対するそれより遥かに少ないことは確かだった。
と言うのも、彼女には彼氏がいることを僕は知っていたからだ。

それからも、毎日のように連絡を取り合っていた。
音楽の話、テレビの話など、話題は本当に他愛も無いものだったが、二・三通に一度は必ずと言っていいほど愚痴をこぼしあっていた気がする。

正直、以前はそれほど仲が良かったわけではない。
しかし、『新入社員』という肩書きを持つもの同士、何か共感できるものがあったのかもしれない。

そんな生活が二週間ほど続いた頃、彼女がいない僕を気遣って女の子を紹介してくれるという事になった。
最初はどうしようか迷っていたのだが、業界が業界。
仕事関係で女性に知り合う事があまり望めないので、お願いすることにした。

そして、その日が今日である。
そう、一昔前に『華金』と言われていた、華の金曜日だ。
楽しみと緊張が相まって、正直なところ仕事に手がつかない。
僕は、フレックスタイム制という制度を初めて有効活用して、仕事を早く切り上げ、待ち合わせ場所に向かった。
お互いの職場の中間という事で、神田で待ち合わせたのだ。

どうやら、僕の方が先に着いてしまったようだ。
三十分ほど待った頃、電話が鳴った。


~つづく~
初夏の風音~第五話~
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2007/08/26 00:14 | Comments(0) | TrackBack() | 初夏の風音

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