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2024/05/17 18:17 |
雑踏の影~第一話~
「だから、何でこれじゃダメなんですか!」
「仕方がないだろ、先方の意向だ。」
「意向って・・・。結局、何になったんですか!」
「繰上げで次点が選ばれた。」
「何で、あんなのが!」
「とにかく、先方の意向とあっちゃ、うちは従うしかない!」

僕の職業はコピーライター。
この仕事に就いて七年目になる。
元々は小説家を目指していたのだが、先輩の誘いを断りきれずこの会社に入った。
うちの会社は、広告業界では三位だが、大企業相手の仕事しか受けない。

入社三年目になった頃、飲料メーカーから受注があった。
社運を賭けた新製品のプロモーションをうちに発注して来た。
そのコピーが社内コンペによって選ばれることになった。
僕は、下積みではあったがこっそり応募した。
自信がなかったと言えば嘘になる。
嬉しいことに僕のコピーは、そのコンペで取締役の目に留まった。

社運を賭けた新商品は爆発的な当たりとなり、受注額とは別に成功報酬も出ることになった。
僕は、その功績を認められ臨時ボーナスを貰う事が出来た。
加えて、入社三年目にしては異例の、アシスタントチーフに昇格となった。

その後もそれなりに業績を挙げ、今年から三十路手前にしてチーフとなった。
チーフになっての初仕事が、今回の菓子メーカーの新製品プロモーションである。
僕は、それこそ寝る間も惜しんで取り組んだ。
帰宅すると日が変わっている日々が毎日のように続いた。

先週、メーカーとの合同プレゼンがあったのだが、社内推薦が付いたプレゼンが倒された。
念の為と、予備に持っていたコピーが選ばれたのだ。

僕は納得がいかなかった。

練りに練ったプロモーションに、思いつきのコピーで販促をしなければいけないというのだ。
結果を聞かされてから今の今まで、自分自身で解せていない。

「じゃぁ、僕はこのプロモーションを降ります。」
「何を言っているんだ!今さら引き継ぎなど出来るわけないだろ!」
「僕は、この仕事に誇りを持っています。それを曲げることは出来ません。」
「先方あっての受注だ!冷静になれ!」
そう言うと、部長は席を外した。


「やってられるかよ!」
一人きりになった会議室で、僕はそう呟いた。


~つづく~
雑踏の影~第二話~
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2007/09/28 23:07 | Comments(0) | TrackBack() | 雑踏の影

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