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2024/05/17 16:58 |
雑踏の影~第六話~
どれくらい歩いただろうか。
僕は、繁華街から遠ざかっていた。
青い道路標識には直進すれば原宿に着くと書き表されていた。

「ハラジュクか。」

一人呟き、直進を避けるように進路を右へ変えた。
いつの間にか、道を照らすものは日の光から街灯へと切り替わっていた。
乗客の思いを代弁するかのような、怒号にも似た電車の音が通り過ぎていく。

目を背けていた。

何故かは分からない。
分からないのだ。

自分が、何故この場に存在し、何故電車の音を避けたのか。
このところ、沸き溢れていた違和感は、きっとそれのせいだろう。
グツグツと煮えたぎる感情ではなく、土鍋の吹きこぼしの様な滲み出る違和感。虚無感。

「コノママ、ココニイテハイケナイ」

今、確かに聞こえた。
この街が、僕に帰巣本能を想起させているのだ。

戦に勝つには、まず敵を知ることだ。
己に勝つには、己を知ることだ。

勝ちたいか、負けたいか。
辞めたいか、続けたいか。
したいのか、したくないのか。
それら全ては愚問なのである。

時として、行動は思考を超越した次元に存在する。
問いかけるのではなく、動くのだ。

動いて、動いて、動きぬいてから、考えればいい。

僕の進路は駅へと向いていた。
この足は、家路につくのではなく、間違いなく出社しようとしている。

何故かは分からない。
それでも、体は職場へと向いていた。


~つづく~
雑踏の影~最終話~
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2007/11/19 23:38 | Comments(0) | TrackBack() | 雑踏の影

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