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2025/05/10 17:52 |
初夏の風音~第七話~

返ってきたメールは予想通りのものだった。
慌てずに冷やして、アロエの成分が入った軟膏を塗ると治りが早いそうだ。
そして最後に、英国紳士は形式的にレディーファーストを行うだけで、本当の優しさは感じられないと付け加えられていた。

僕は定食屋の帰りに薬局に寄ってみた。
家に着き、火傷したところに軟膏を塗る。
少しヒリヒリするが、何か体の奥の方に染み渡っていく気がした。

その後はすることがなくなってしまったので、感想をメールで送ってみた。
タバコに火をつけ、灰を落とさないように煙を吹き出したところで携帯が鳴った。
随分と早い返事だなと思いつつ、携帯を開けて見ると友達を紹介してくれた彼女だった。
ウチに忘れ物をしたと言うので、探して持って行くと答えると、仕事帰りに取りに来ると答えた。

何を忘れていったのか部屋を探してみるが、どこにも見当たらない。
探し物に疲れ一服していると、昨日から風呂に入っていないことに気がついた。
彼女が来るにはまだ時間があるので、急いで入ってこようと思い、タバコを消した。

我が家は、一人暮らしにはお決まりのユニットバスだ。
支度をして、風呂場に行くと照明を反射し、輝いているものがあった。
それは、指輪であった。
不意に見つけた探し物に戸惑いもしたが、テーブルに置いてシャワーを浴びた。

サッパリした気分で風呂から出ると、携帯にメールの着信があった。
それは、友達からのメールであった。
そこには、火傷を心配すると同時に、僕が変わってる人だと書かれていた。
これから付き合うかもしれない人に対してする話しではないと言うのだ。

僕は、そこで初めてメールの相手が『付き合うかもしれない人』だと認識させられた。

「この子と付き合うのかなぁ」

そう呟き、いつものように天井を見上げて彼女が来るのを待った。


~つづく~
初夏の風音~第八話~

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2007/08/29 23:41 | Comments(0) | TrackBack() | 初夏の風音

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