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2024/05/17 19:23 |
放課後のハミング~第二話~
教室に戻った僕を待ち受けていたのは、興味と関心が滲み出るような目をしたクラスメート達であった。

「どうだった?」

クラスメートが言った一言を皮切りに、僕の周りに人が集まってきた。
集まっては来ないまでも、聞き耳を立てている人がいることも知っていた。
それから、僕は事の成り行きを冗談を交えて大きな声で話した。

話が一段落するとクラスメートは散り散りになっていった。
僕は、カバンを取り帰る準備を始めた。
時は昼休みだが、午後の授業は受けずに帰ることに決めた。
お説教の後は、疲れるのだ。
話を聞きつけた人たちが、僕に説明を求めてくる。
だが、話す側としては、同じ話を何度も話す事ほどつまらないものはないのだ。
だから僕は、いつも通り保健室に行き、誰が見ても分かるような『体調不良の演技』をして帰る。

教室を出ると、五時間目の英語の教師がいた。
『しまった。』
そう思った。
五組の担任でもある英語教師は、二年目の新米教師でとにかく暑苦しい。
きっと、教師という職業に幻想を抱いているのだろう。
『どんな生徒も話せば理解してくれる』
そんな暑苦しさが滲み出ていて、その様子が僕の反逆精神を煽る。
だが、英語教師はお構いなしに話しかけてくる。

「もう帰るのか?」
「ちょっと調子が優れないんで。」
「顔色もいいのに、どこが調子悪いんだ?」
「頭が割れるように痛いんです。」
「タバコの吸いすぎじゃないのか?」
「そんなに吸ってませんよ。一箱で一週間持ちますから。」
「やっぱり、見つかったのはおまえか。」

僕がこの教師を認めているは、他の教師と違い頭ごなしに叱る事しない点である。

「じゃぁ、そろそろ帰ります。」
「たまには俺の授業も受けてけよ。」
「明日は受けますから。」
「明日も呼び出しされて帰られたら溜まらないから、今日受けていけ。」

あぁ、本当に頭が痛くなりそうなやり取りだ。
半ば強制的に教室に連れ込まれた。
クラスメートは、その様子を笑いながら見ている。
『まぁ、おもしろいならいいか』
クラスメートが笑っていたので、『やれやれ』という仕草を大袈裟にして席に座る。

この英語教師の授業はつまらなくはない。
何でも、『英語を楽しく感じてもらいたい』がモットーらしく、授業中に洋楽をかける。
ベンチャーズやクラプトン、カーペンターズをかけることもあった。
今日はクラプトンの日のようだ。
音楽を聴きながら心地よく夢の世界へ飛び込んだ。

If I can change the world
I would be the sunlight in your universe

~つづく~
放課後のハミング~第三話~
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2007/09/06 23:25 | Comments(0) | TrackBack() | 放課後のハミング

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