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2024/05/02 23:13 |
初夏の風音~第一話~
社会人になりたての僕は、狭いワンルームの真ん中で大の字になって天井を見上げていた。
慌しく過ぎ去っていく毎日にも慣れ、初めての一人暮らしを楽しめるようになっていた。

時はゴールデンウィーク。
ゴールデンウィークという言葉は、サービス業界が年度一発目の商戦のために作り出した造語らしい。
そのため、国営放送ではゴールデンウィークというフレーズは使われないというのだ。
と言っても、誰かに聞いた話で本当かは分からない。

さて、このゴールデンウィーク。
疲れきった体を休めるには長過ぎ、遊ぶには短過ぎる。
かと言って、一人暮らしを始めて早々に帰省するには気が乗らない。
だから、僕はこうして天井を見上げているのだ。

目が覚めると外はすっかり暗くなっていた。
朝から何も食べていないせいか、お腹がすいている。
「こんな時にご飯を作ってくれる彼女でもいたらなぁ」
誰もいない部屋で、天井に向かって呟いた。


~つづく~

初夏の風音~第二話~
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2007/08/25 23:11 | Comments(0) | TrackBack() | 初夏の風音
初夏の風音~第二話~
今日の夕飯はカップラーメン。
一人暮らしを始めた頃は、それはそれは真面目に自炊をしていた。
しかし、それも最初の数週間だけで、それからと言うもの定食屋・コンビニの弁当・カップラーメンのローテーションとなっている。
時間は余るほどあるが、『自炊』という作業に時間をかけることに疲れてきていたのだ。

僕が入った会社は実家から通えない訳ではなかった。
でも、僕は家を出たかった。いやそれは少し違う。あの街を出たかったのだ。
僕が生まれ育ったのは、何でもあるようで何もない町。
駅前には遊ぶ場所が溢れている。
駅を少し離れれば都会には珍しい『自然』も残っている。
それが心地よくもあり、鬱陶しくもあった。

そんなことを考えていると、3分という時間はあっという間に過ぎるものだ。
湯気を吐き出すカップから口へとラーメンを運ぶ。
それは、食事というにはお粗末過ぎる栄養補給の作業であった。


時はさらに進み、日が変わろうとしていた。
このワンルームの時間は歪んでいる。
夜は瞬く間に過ぎ去って行くのに、夜中は驚くほど速度を落とす。
ベッドに体を預け、天井を見る。
そこには昼とはわずかに違う風景がある。

その刹那、突如として焦燥感が僕を襲った。
「明日こそは何かしよう」
そう自分に呟き、何をするか考えていた。


気がつくと窓の外は明るかった。
季節は新緑の薫る初夏。
昼から行動するには、いささか抵抗を覚える。
結局、今日もフローリングに寝そべり天井を見上げる。

「明日こそ、明日こそは何かをしよう」
そう考えているうちに、僕は夢を見ていた。


~つづく~
初夏の風音~第三話~

2007/08/25 23:13 | Comments(0) | TrackBack() | 初夏の風音

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